無月経

 続発性の無月経とは、普通3か月(3周期)以上、生理が停止することをさします。 視床下部や中枢神経に異常がある場合や、過剰なストレス、卵巣発育不全・卵巣早衰など卵巣機能に問題がある場合、子宮発育不全など子宮に問題がある場合などさまざまです。中医学では、いずれの場合も、機能的な面の改善に効果を期待して、次のように分類して、お薬を選んだり組み合わせて、周期をととのえます。

おもにホルモン分泌異常が原因のタイプ

■腎虚タイプ

 漢方の「腎」は視床下部ー脳下垂体ー卵巣の一連のホルモン分泌に関係するほか、卵巣や子宮などの生殖器官をコントロールするものと考えます。何かをきっかけにまたは思い当たることがなくても、生理がとまってしまう人は、腎がもともと弱いことが基本的にあります。ほかに、生理周期はストレスや冷え・多忙で遅れたり乱れがち、基礎体温が一相性になることがある、お腹や腰が冷えたり痛い、下半身がだるい、疲れやすい、むくみやすいなどの症状もよくあります。

 無排卵、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、不正出血、低体温などが起きやすい。無理な運動や仕事・寝不足など、疲れをためるのは禁物。冷えはもちろん×です。

 漢方では、体質に応じた「補腎薬」を中心に活用します。体質改善目的なので長期に服用することが大切。 参茸補血丸、海馬補腎丸、杞菊地黄丸など。

■痰湿タイプ

 「腎」が弱く、代謝が悪いため、過剰な水分が体内にのこってしまうタイプです。漢方では、むくみ、だるさ、体が重だるい、肥満のほか、多嚢胞性卵巣症候群・卵巣嚢腫などに関係が深いと考えます。痰湿は、スムーズなホルモンの分泌や転換を阻害すると考えるので、卵胞が育たない、排卵が遅れる、基礎体温が一相性などの現象がよくおきます。血行不良の「瘀血」ともよくいっしょにあらわれます。

 排卵障害、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、卵巣嚢腫、子宮筋腫などが起きやすい。 こってりした食事や甘いもの、水分のとりすぎは要注意。

 漢方では、「補腎薬」や「化痰利湿」のお薬を組み合わせて活用します。「痰湿」はしつこいので、治療も長期的に続ける必要があります。爽月宝、星火温胆湯、水快宝、シベリア霊芝など。

貧血タイプ

 「気」や「血」が充分であれば、卵巣に血液が送られその機能が正常にはたらきますが、気血不足の人は、生理をおこすまでの材料が足りない状態です。無理なダイエット・ストレスなどで急に痩せた、貧血傾向、寝不足、胃腸が弱く食事があまり食べられない人などに多い。

 貧血、冷え性、たちくらみなども同時に起きやすい。 「気血」を増やす必要があります。食事を抜いたり簡単にすませてないか内容をみなおして、バランスのよい消化のよいものを食べることが大切。レバー・にんじん・プルーンなど赤い食品や、黒ゴマ・黒キクラゲ・黒豆など黒い食品もおすすめ。お腹の弱い人は、冷えや食べすぎなどでお腹をこわさないように注意。

 漢方では、「気血」を補う薬や、血行をよくする「活血薬」を組み合わせて活用します。婦宝当帰膠、補中益気丸、十全大補湯など。

ストレス過剰タイプ

 漢方の「気」のめぐりは、血液の流れをコントロールすほか、視床下部ー脳下垂体ー卵巣のホルモンの流れにも影響するので、「気滞」の状態では、生理周期が乱れがちで、程度がひどい場合、とまってしまうこともあります。過度のストレス、心配事、イライラ、試験などが原因としてよくあります。また、気のめぐりの悪さから、血のめぐりの悪い「瘀血」もひきおこし、より生理がおきにくい状態になります。

 高プロラクチン血症、PMS(月経前症候群)なども起きやすい。 刺激の強い食べ物やコーヒーは控えめに、香りのよいお茶やフルーツ、野菜などを利用して。ストレス解消、気分転換を上手にするのもとても大切。

 漢方では、気のめぐりをよくしてストレスを和らげる「疏肝理気」の薬を中心に活用します。星火逍遥丸、婦宝当帰膠、冠元顆粒など。