子宮内膜症

 子宮内膜症は、子宮内膜と似てはいるものの少し異なる子宮内膜類似組織が、子宮の内膜以外の場所に発生し、そこで子宮内膜と同様に機能をしてしまう病気です。この類似の子宮内膜も、本来の子宮内膜と同様に、エストロゲンやプロゲステロンに反応して増殖・粘液分泌をし、生理時にはホルモン低下とともにはがれて出血します。

 ところが、その出血は、月経血のように膣から排泄できないため、発生した場所で病変をつくり炎症を起こします。炎症の際に発生するプロスタグランジンやサイトカインという物質が妊娠を邪魔するという説もあります。また炎症が続くと、癒着や周囲にある卵管や卵巣などの機能低下を招き、不妊をひきおこす可能性が高くなります。

 発症の原因としては、おもに次のような学説が考えられえています。

■月経血の逆流
 逆流した内膜組織がダグラス腔・卵巣・骨盤腔の深いところなどに生着。

■リンパ静脈による拡散
 肺や胸膜、鼻粘膜など離れた場所にも発症することがあるため。

■体腔上皮が化生
 正常の子宮内膜組織でない体腔上皮から化生、初経前の小児やエストロゲン大量投与の男性にも出現することがあるため。また、発症の場所により、次のようにも呼ばれます。

■チョレート嚢腫
 卵巣内で内膜組織が増殖する。

■子宮腺筋症
 子宮筋層内に内膜組織がもぐりこみ増殖する。

 症状は、生理痛、生理時以外の下腹部痛・腹痛、肛門深部痛、性交痛、生理過多、不正出血、貧血、吐き気などです。進行すると、卵管や周囲の臓器との癒着をおこし卵管や子宮の動きも限定されたり、卵管や卵管采の機能も損なわれる可能性が大きくなります。

 中医学では、異常な内膜組織を、正常な場所から離れた内膜様の瘀血「離経瘀血・内膜膏脂」と考えます。通常の瘀血(血行不良や脈内からもれでた血)だけでなく、痰湿(代謝できない水分の滞り)や膏脂(代謝できない油分の滞りや酸化)が混在しているもの、ちょうどべっとりした脂汚れのような状態と考えます。基本的には、「瘀血膏脂」を除くお薬を中心に、体質に応じたお薬で対応します。

 症状、進行度、お子さんを現在希望しているか、など状況は人によってさまざまです。 現在の妊娠の希望などをよく相談して治療の方向性をきめることも大切です。

なりやすい体質の人は

■陽虚タイプ

 漢方の「腎陽」は、体を暖め免疫を強くする生命エネルギーのようなもの。この陽気が不足している人は、お腹や腰が冷えやすく、排泄や代謝、免疫調節もうまくいかず、瘀血もできやすいと考えます。また、生理中、体を冷やす習慣から、陽虚体質にしてしまうこともあります。このタイプの痛みは、かなり激しく出血量や黒い塊が多い。

 ほかに、胃腸が弱くて下痢をしやすい、疲れやすい、スタミナがない、腰痛が起きやすい、下半身がむくみやすいなどの症状もよくあります。卵巣嚢腫や子宮筋腫ができやすく内膜症からチョコレート嚢腫になってしまうことも多い。 特に生理中の冷えや薄着、冷たいもの・生ものなどのとりすぎに注意。インスタント食品や外食、お菓子、脂っぽい食事に偏るのも要注意。

 漢方では、「補腎陽薬」や「活血薬」「化痰薬」を生理周期にあわせて利用します。 参茸補血丸、田七人参、爽月宝、水快宝、シベリア零芝など。

■肝鬱気滞タイプ

 漢方の気は、「肝」(感情や気持ちのコントロールに関わる)に影響を及ぼし、生理血のスムーズな排泄やホルモンバランスにも関係します。イライラ、落ち着かない、いつもよりストレスを感じるなどの症状がでやすくなります。生理前この症状はでやすく、ほかにふきでもの、のぼせ、寝汗などの症状もでたり、内膜症がある場合、下腹部の痛みがでてくることがあります。

 ストレスや悩みは、上手に発散する工夫を。 香りや香りのよい食べ物やハーブティーでリラックスするのもおすすめ。 神経を興奮させる辛いものやこってりしたもの、甘いもの、味の濃いもののとりすぎは症状をひどくするので注意。

 漢方では、「疏肝理気薬」や「活血薬」「化痰薬」を利用します。 星火逍遥丸、加味逍遥散、爽月宝、水快宝、シベリア零芝など。

■気虚タイプ

 漢方の気は、体の正常な機能、排泄や免疫に必要なものですが、エネルギーの足りない「気虚」タイプの人は、免疫機能が弱かったり、生理血の排泄がきれいにできないなど、やはり瘀血をつくりやすい傾向にあります。生理の量が多く塊も多いことが多い。生理期以外、だらだらと不正出血することも。ほかに、胃腸が弱くて胃もたれや下痢をしやすい、疲れやすい、むくみやすい、生理中は痛みのほか、眠かったりだるい、風邪をひきやすいなどの症状もよくあります。

 無理な運動や仕事・寝不足など、疲れをためるのは禁物。暴飲暴食、冷たいもの、脂っぽいものなどで胃腸に負担をかけるのもよくありません。 生理時下痢する人も多いですが、特に生理中冷たいものに注意してください。

 漢方では、「補気薬」や「活血薬」「化痰薬」のお薬を中心に利用します。 補中益気丸、帰脾錠、爽月宝、水快宝、シベリア零芝など。