無排卵月経

 無排卵月経とは、一応出血があっても、排卵していない生理のことです。出血の量が少ない、あるいはだらだらと続く、生理周期が40日以上など長い、以前あった痛みがないなどの症状があれば、無排卵月経の可能性があります。基礎体温は、排卵していないので、高温期のない一相性になります。

 もともと、卵巣機能や視床下部・脳下垂体系に問題がある場合のほか、過剰なストレス・ 急激なダイエット・肥満などがきっかけで視床下部・脳下垂体系の働きが悪くなっておきる場合もあります。また、高プロラクチン血症、多嚢胞卵巣症候群(PCOS)でも、無排卵になることがあります。

 生理後、卵胞はある程度育ちエストロゲンが分泌され、子宮内膜も多少厚くなりますが、排卵には至らないためプロゲステロンは分泌されず体温も上昇しません。卵胞の発育が止まると、エストロゲンの分泌もなくなり、子宮内膜は剥がれ落ちてしまうため出血がおきます。

 中医学では、ホルモン分泌を担う「腎」の問題が大きいと考え、「補腎薬」を中心に、お薬を選んだり組み合わせて、排卵できる体づくりを目指します。

腎虚タイプ

 漢方の「腎」は視床下部ー脳下垂体ー卵巣の一連のホルモン分泌に関係するほか、卵巣や子宮などの生殖器官をコントロールするものと考えます。無排卵の場合、「腎」がもともと弱い、無理を続ける生活習慣などで「腎精」が消耗していることがよくあります。お腹や腰が冷えたり痛い、下半身がだるい、疲れやすい、むくみやすいなどの症状もよくあります。基礎体温は、全体的に低めで、変動のない一相性になることが多い。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を伴うことも多い。無理な運動や食事制限・仕事・寝不足など、疲れをためるのは禁物。 体を冷やしたり冷たいもののとりすぎももちろん×です。

 漢方では、体質に応じた「補腎薬」を中心に活用します。 参茸補血丸、海馬補腎丸、参馬補腎丸、杞菊地黄丸、オリヂンPなど。

気血不足タイプ

 「気」や「血」が充分であれば、卵巣に血液が送られその機能が正常にはたらきますが、気血不足では、卵巣がうまく働かず卵胞が育たないため、排卵が起きません。「腎」が弱く血が充分つくられないほか、無理なダイエット・ストレスなどで急に痩せた、寝不足、胃腸が弱く食事があまり食べられないなども原因になります。貧血、冷え性、たちくらみ、めまいなどの症状も起きやすい。「気血」を増やす必要があります。食事を抜いたり簡単にすませてないか内容をみなおして、バランスのよい消化のよいものを食べることが大切。レバー・にんじん・プルーンなど赤い食品や、黒ゴマ・黒キクラゲ・黒豆・昆布など黒い食品もおすすめ。お腹の弱い人は、冷えや食べすぎなどでお腹をこわさないように注意。

 漢方では、「気血」を補う薬に、腎を強くする「補腎薬」を組み合わせて活用します。婦宝当帰膠、補中益気丸、十全大補湯、参茸補血丸、参馬補腎丸など。

ストレス過剰タイプ

 漢方の「気」のめぐりは、血液の流れをコントロールするほか、視床下部ー脳下垂体ー卵巣のホルモンの流れにも影響するので、「気滞」が強くなると、卵胞育成や排卵もスムーズにいかなくなります。過度のストレス、心配事、試験など精神的な負担が、よくひきがねになります。イライラや鬱っぽいなど気持ちが不安定になりやすいのが特徴です。基礎体温は、一相性だがギザギザと変動があることが多い。 高プロラクチン血症を伴うことも多い。刺激の強い食べ物・辛いものやチョコレート・コーヒーなどは控えめに。 香りのよいお茶や柑橘系のフルーツ、野菜、ハーブ類を利用して。ストレス解消、気分転換を上手にするのもとても大切です。

 漢方では、気のめぐりをよくしてストレスを和らげる「疏肝理気」の薬に、「腎」を強くする「補腎薬」を組み合わせて活用します。 星火逍遥丸、婦宝当帰膠、参茸補血丸、参馬補腎丸など。