アトピー性皮膚炎

 アトピー性皮膚炎とは、増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患。患者の多くはアトピー素因を持つ。

 ■アトピー素因
  家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のいずれかあるいは複数の疾患)
  IgE抗体を産生しやすい素因

診断基準

 ■かゆみ
 ■特徴的皮疹と分布
  ・皮疹は湿疹病変
   急性病変…紅斑、浸潤性紅斑、丘疹、漿液性丘疹、鱗屑、痂皮
  慢性病変…浸潤性紅斑・鱗屑化病変、痒疹、鱗屑、痂皮
  ・分布
   左右体側性 
   好発部位:前額、眼囲、口囲・口唇、耳介周囲、頸部、四肢関節部、体幹
  ・年齢による特徴
   乳児期…頭、顔に始まり体幹、四肢に下降
   幼少児期…頸部、四肢屈曲部の病変
   思春期・成人期…上半身(顔、頸、胸、背)に皮疹が強い傾向
 ■慢性・反復性の経過

重症度

 ■重症…高度の腫張・浮腫・浸潤ないし苔癬化をともなう紅斑、丘疹の多発、高度の鱗屑、痂皮の付着、小水疱、びらん、多数の掻破痕、痒疹結節
 ■中等症…中等度までの紅斑、鱗屑、少数の丘疹、掻破痕など
 ■軽症…乾燥、軽度の紅斑、鱗屑など
 ■軽微…炎症症状に乏しく乾燥状態主体

合併症

 ■眼科疾患 白内障・網膜剥離(顔面の重傷例において)
 ■カポジー水痘様発疹症(単純へルぺス)
 ■伝染性軟属腫(水イボ)
 ■伝染性膿痂疹(とびひ)

原因

 ・遺伝的素因の他、腸内細菌叢の乱れ、栄養の偏りなどが指摘されるが、はっきりしない。

治療

 ■外用療法
  ・ステロイド(副腎皮質ホルモン)
   症状の度合い・炎症の発生部位によって、ウィーク・ミディアム・ストロング・ベリーストロング・ストロンゲストを使い分ける。
  ・タクロリムス外用薬(プロトピック軟膏)
   ストロングの強さをもち、炎症が強い皮膚のみに浸透していく性質があり、副作用の生じる顔や首に使われやすい。
  ・抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬
   痒みを抑える目的で使われることがある。 
  ・保湿外用薬
   ワセリン、プラスチベース、ヒルドイドなど

漢方でのみたて

 ・血熱(けつねつ)
 ・熱毒(ねつどく)
 ・湿熱(しつねつ)
 ・血瘀(けつお)
 ・肝腎不足(かんじんぶそく)
 ・血虚(けっきょ)
 などにわけられます

 清営顆粒、瀉火利湿顆粒、黄連解毒湯、冠元顆粒、温清飲、冬帰飲子、その他、清熱解毒作用のある健康食品などがよく使われます。

養生

 ・悪化条件をさけられるよう努力を。
 ・高カロリー・高脂肪食、アルコール、たばこ、コーヒー、香辛料の多いものは控える。
 ・甘いもの(お菓子、チョコ、ケーキなど)を控える。
 ・乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズなど)を控える。
 ・野菜やきのこ・海藻をたくさんとるようにする。