高プロラクチン血症

 乳汁分泌ホルモンであるプロラクチンは、常に少量は出ていますが、妊娠中に増え始め、産後の授乳期に大量に分泌されます。高プロラクチン血症は、妊娠中でも授乳期でもないのに、血中プロラクチン値が高くなってしまうホルモン異常です。また、普段は、正常ですが、ストレス時・睡眠時・黄体期に高くなる潜在性高プロラクチン血症の人もいます。降圧剤・精神安定剤・胃潰瘍の薬の服用などでもプロラクチンの上昇が起こることがあります。

 プロラクチンは、視床下部ー脳下垂体ー卵巣系の一連のホルモンの機能を抑制し、本来分泌されるべき、各種性ホルモンを抑制するので、生理不順、卵胞発育障害、排卵障害、基礎体温が二相性にならない、などの現象が起こってきます。人によっては、乳汁分泌、乳房張痛が起こることもあります。当然、不妊の原因にもなります。

 中医学では、乳房やストレスに関係する「肝」、ホルモンに関係する「腎」の異常が最も大きいと考えます。 特に「腎」が弱い人は、血行不良や水分代謝も悪く、病理産物である「瘀血」や「痰湿」の症状(PCOSなど)が併せてでやすくなります。

腎陽虚肝鬱タイプ

 漢方の「腎陽」は、ホルモンの原動力のようなもので、視床下部ー脳下垂体ー卵巣系の一連のホルモンの流れを推し進めるものですが、「腎陽虚」の人はここが弱い傾向にあり、ストレスなどで、さらに「肝」も影響をうけやすく、高プロラクチン血症にもなりやすいのです。

 生理が大幅に遅れたり、来ない、生理の量が少ない、腰痛、冷え症、イライラ、胸が張って痛いなどの症状がよくあります。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、排卵障害、黄体機能不全なども起きやすい。

 冷えやストレスは、悪化条件なので、ストレス解消や冷え対策を工夫することも大切。 こってりしたものや辛いもの、生もの、冷たいものなどはとりすぎに注意。

 漢方では「補腎陽薬」「疏肝薬」などを中心に利用します。周期調節法を組み合わせることも。

腎陰虚肝鬱タイプ

 漢方の腎は、視床下部ー脳下垂体ー卵巣系の一連のホルモンの流れを推し進める力ですが、「腎陰虚」の人は、清熱作用をもつ陰分の不足から熱が過剰になり、熱の力でこの流れが亢進し早くなってしまいます。同時に「肝」が弱くなると、プロラクチンが上昇するほか、熱感の症状が強くなるのが特徴です。

 生理がなかなか来ない、生理の量が少ない、手足や顔が熱いことがある、胸が張りしぼると黄色い乳汁が出ることがある、舌は赤いなどの症状がよくあります。乳腺症、自律神経失調症、不眠症なども起きやすい。

 ストレスや多忙が悪化条件、ストレス対策や時間のやりくりを工夫して。 陰を消耗し神経を高ぶらせる辛いもの、こってりしたもの、コーヒーなどは控えめに。

 漢方では、「補腎陰薬」「斂肝薬」などを中心に利用します。

高プロラクチン血症とは

 
プロラクチンは、産後の授乳に関わる脳下垂体から分泌されるホルモンです。
妊娠していない状態でプロラクチンが高くなってしまう場合、高プロラクチン血症とよびます。卵胞の成長・排卵などを邪魔することがあります。

症状

 
妊娠・出産していないのに母乳がでる・生理不順・無月経など

原因

 
脳下垂体の腫瘍(プロラクチン産生腫瘍)
視床下部の腫瘍や病気
甲状腺機能低下・てんかん・慢性腎不全など
薬の服用(ピル・抗うつ薬・胃潰瘍の薬など)

西洋医学の治療

 
はっきりした原因があればその治療をする
プロラクチンを抑えるドーパミン作動薬の服用(カバサール・テルロン・パーロデル)

PCOの方の養生法

 

基礎体温は

 
日ごとの変動が大きく、ガタガタしている

漢方の対策

 
断乳にも使用される炒り麦芽を活用します
卵巣の血流に働きかける補腎や補血のお薬を活用します

漢方の養生

 
ストレスは高プロラクチンをひきおこすことがあります
運動や入浴など、気持ちや体をリラックスさせるようにこころがけましょう
ホルモンバランスを整え、血を作るために、睡眠をしっかりとりましょう
神経を昂らせる刺激物や香辛料は控えめに、バランスのよい食事をとりましょう