黄体化未破裂卵胞(LUF)

 一見、黄体機能不全にみえる場合でも、成熟した卵胞が排卵せずに、卵巣内に残っていることがあり、黄体化未(非)破裂卵胞(Luteinized Unruptured Follicle)と呼ばれます。黄体ホルモンも分泌され、体温は高温に移行し排卵したような形を示すので、LUFは、排卵前後、超音波検査を行わないと診断できません。高温期は、短く10日くらいのことが多いのが特徴です。

 原因は、不明な点も多いですが、ひとつには、FSH、LHに異常がおこり、排卵期に上昇するLHホルモンの上昇不足(LHサージが不充分)がおきるということが考えられています。また、子宮内膜症や腹腔内炎症による卵巣の癒着・表面が硬くなるなどの現象や卵巣付近の血流障害が関係していると考えられています。LUFは、毎周期おこるとは限りませんが、繰り返し起きるようなら、改善の手立ても必要です。

 中医学では、ホルモンの転換(LHサージ)不足は、おもに陽気(エネルギー)の不足の「腎陽虚」が、卵巣の血流不足は「血虚」が根本にあると考えます。また、癒着などは、古くからの「瘀血」との関係が深いと考えます。

腎陽虚が強いタイプ

 漢方の「腎陽」は、ホルモンの原動力のようなもので、視床下部ー脳下垂体ー卵巣系の一連のホルモンの流れを推し進めるものですが、「腎陽虚」の人はもともとここが弱く、さらに卵巣付近の血流不足の「血虚」をかねると、よい卵胞が育ちにくく、排卵や、高温への上昇がスムーズにいきにくくなります。排卵してもよい黄体ができにくかったり、排卵できないこともあり、高温が持続しない傾向になると考えられます。基礎体温は、全体的に低め、低温期が長いことが多い、高温への上昇がスムーズでない、高温期は短く途中や最後のほうで下がるなどの特徴があります。

 ほかに、生理痛や腰痛がある、冷え性、疲れやすいなどの症状もよくあります。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、排卵障害、黄体機能不全なども起きやすい。冷たいもののとりすぎや薄着による冷えや血行不良に要注意。こってりしたものや辛いもの、生もの、冷たいものは控えてバランスのよい食事が大切。

 漢方では「補腎陽薬」「補血薬」などを中心に利用します。 生理のリズムを整える周期調節法もよく活用され、特に排卵期前後には「活血薬」、また高温期・生理期に「活血薬」と「利湿薬」を利用します。

瘀血が強いタイプ

 漢方の「瘀血」は、血流が悪いことや、その結果滞った古い血をさしますが、子宮内膜症や癒着などとは、とても関係が深いと考えます。「瘀血」は生理痛や生理時の塊をひきおこすほか、内膜症などの場合、長引くと癒着をおこし、排卵障害・卵巣の周囲が硬くなるなど卵巣や周囲の機能を損なう可能性があります。基礎体温は、生理期きれいに体温が下がらずギザギザしたり、低温期に時折体温の高い日が混じる、高温期はLUFの場合、短めです。

 ほかに、生理痛がひどく生理時塊が多い、頭痛、肩こり、手足の冷え、顔色がくすんだり色素沈着が多いなどの症状もよくあります。子宮内膜症、チョコレート嚢腫、子宮筋腫、ポリープなども起きやすい。 体を冷やす(特に生理中)、睡眠不足や疲れをためるのはよくありません。 こってりしたものや辛いもの、冷たいもの、お菓子類は血をドロドロさせたり、血流を悪くしがちです。野菜や海藻・豆類をとりいれたバランスのよい食事が大切。

 漢方では、「活血薬」を中心に利用します。 生理のリズムを整える周期調節法、特に排卵期前後には「活血薬」を活用します。