排卵誘発剤・高プロラクチン薬などとの併用

 排卵障害がある、またはタイミング法のみではうまくいかない場合、排卵誘発の薬を服用または注射したり、プロラクチンが高値の場合、高プロラクチン血症の薬を内服することがあります。副作用がでたり、また長期の使用が適当でない場合もあります。漢方はこれらの治療効果を上げたり副作用防止に役立ちます。

間接系排卵誘発剤(クロミッド・セキソビットなど)

 間接系排卵誘発剤は、生理が長期間来ない、無排卵、毎周期排卵がない、多嚢胞性卵巣症候群など、排卵障害がある場合に使用します。 間接系排卵誘発剤は、視床下部や脳下垂体に働きかけ、卵巣を刺激することによって卵胞の育成を促す薬です。例えば、クロミッドは、エストロゲンの働きを弱めることで、視床下部・脳下垂体にエストロゲンが足りないと錯覚させて、FSHやLHを多く出させ、排卵率を高めるお薬です。しかしこのクロミッドの作用機序ゆえ頸管粘液減少、子宮内膜が薄くなるなどの副作用がおきやすくなり、排卵率が70-80%と高くなるのに対し、妊娠率は20%程度といわれています。

 漢方では、誘発剤を数ヶ月連用して、頚管粘液の減少や内膜が薄くなる状態を「血や陰の不足」した状態と考えます。また、陰が不足した結果として熱が相対的に亢進してしまい、「陰虚火旺」となり、低温期でも体温が高くなることもあります。

 したがって、漢方の対策は、「補血・補腎陰」が中心となります。「補血・補腎陰」することにより、誘発剤の副作用を緩和し、卵胞の質をよくする、エストロゲンを増やすことによって頚管粘液を増やす、内膜の状態をよくするなどの効果が期待できます。 高温期には、体温を保ち内膜の分泌状態をよくするため、「補陽薬」もよく併用します。

直接系排卵誘発剤(HCG-HMG)

 直接系排卵誘発剤は、間接系の誘発剤で効果がなかった場合や、体外受精・顕微授精などの際に、採卵する卵子の数を増やすなどの目的で使用します。直接系排卵誘発剤は、卵巣に直接働きかけ、卵胞育成や排卵を促します。hMGは、FSHとLHを含むため卵巣に直接働いて卵胞を育て、hCGは、卵胞を成熟・排卵させます。

 直接系の排卵誘発剤は、間接系のものより効果が高いのですが、同時に多数の卵胞が育つため、まれに、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)がおきる場合があり、多胎の可能性も高くなります(OHSSの症状としては、のぼせ・頭痛・吐き気・嘔吐・胸や脇の張り・性欲亢進などがあります)。

 漢方では、卵胞がよい状態で育つよう、低温期に重点をおき、「補血・補腎陰」を中心に、お薬を活用します。 高温期には、体温を保ち内膜の分泌状態をよくして着床をよくするため、「補陽・活血」を中心としたお薬をよく活用します。また、卵巣が腫れてしまった、着床しなかったが生理後も体温が下がらないなどの場合は、「清熱薬」「活血薬」などを中心に活用します。

高プロラクチン血症薬(パーロデルなど)

 プロラクチンは、妊娠中・授乳中に多く分泌され、乳汁を分泌するホルモンですが、それ以外の時期に高値になると、卵胞の生育や排卵を妨げてしまいます。プロラクチンは、降圧薬や胃潰瘍の薬、精神安定剤の服用、過剰なストレスなどでも上昇してしまうことがあります。

 プロラクチンを下げる薬には、パーロデルやテルロンなどがありますが、人によっては吐き気などの副作用が強く出ることがあります。

 漢方では、「肝」の問題が大きいと考えるので、体質に応じた「疏肝薬」を中心に活用します。