体調を整えて痩せる、漢方ダイエット

■「クロワッサン」 2005/4/25号
 体調が整い、リバウンドしない「中医ダイエット」が取り上げられました。以下は、中医ダイエットに成功した方のコメントと、中医学講師何暁霞先生の解説です↓  エッセイスト中山庸子さんのチャレンジも注目!

実際に中医ダイエットにチャレンジした方は…

「クロワッサン」 2005/4/25号■1.5kg減です。体重が減るなんて、ここ10年で初めて!
 今年で52歳、運動はしているのにここ10年じわじわと太ってきた、「食事制限は絶対無理」と、ダイエット企画を断り続けたエッセイスト中山さんは・・・「最近更年期の症状も出始めて、のぼせたり、気分がふさいだり、肩こり、冷えetc・・・子宮筋腫があって貧血もひどい。体質改善の漢方の企画なら」と中医ダイエットに挑戦。

 中医学講師の見立てでは、中山さんは、「腎虚」を中心に「気滞」「瘀血」もあるタイプ。1か月後の成果は?「1.5kg減です。体重が減るなんて、ここ10年で初めて!」

■漢方薬を飲み、生活に漢方の考え方をちょっとプラスしただけで?
 「野菜のおかずを先に食べると、ご飯の量は自然と減ります。でも無理がない。間食もしたし、お酒も飲んだし。間食は、以前はコーヒーにクッキーだったのが、今はナッツやドライフルーツと漢方茶になっただけ。健康にいいことをしていると思うと、同じ間食でも安心で、ストレスがたまりません。」

■体調のほうは?
 「調子を崩したり、肩こりや疲れが出ても、翌日には治る。それに体を動かすのが以前ほどおっくうではなくなっています。以前は疲れると、体が砂袋のように重くて動けなかったんですから。ダイエットというより体調がよくなった。それで体重が減ったんですからうれしい限り!」

■中医学講師の先生は、1か月後の中山さんをみて?
 「瘀血の証拠の舌裏の静脈の色が薄くなっています。それに、今日は目に力、輝きがある。実をいうと、先日はちょっと弱かったんですよ。42歳からの10年間は、女性の体が一番変化する時期です。40-50代で体型を崩さなければ、歳をとってもあまり崩れませんし、ここを養生すると、60歳から元気になって、第二の人生が始まります。」

■これからの人生の生活の芯ができたと喜ぶ中山さんは・・・
 「おしゃれができる体型を維持して、元気でかわいいおばあさんになるために、漢方生活を続けます!」

■一年で無理なく10kg減。ストレスにも強くなった気がします。
 田中さんは、三人のお子さんの出産後、ストレスとイライラによる過食で、もともと50kgくらいの体重が瞬く間に60kgに増えてしまった。「薬局の先生が薦めてくれたのが星火逍遥丸と三爽茶。星火逍遥丸は、一瓶のみ終わらないうちに効きました。イライラしなくなったんです。ダイエット目的の三爽茶にもストレスを緩和してくれる効果があるとか。」イライラがとれ、甘いものも以前ほどほしくなくなった。食事は普通に摂っているのに、1年で10kgやせた。体質が変わったのだ。 「今では、〈今日はあれとこれをやって〉と前向きでいられる自分がうれしい。バラバラだった気持ちと体のバランスがとれてきたように感じます。」

■体重減少と同時に、いつの間にか手足の冷えもなくなって疲れ知らずに!
 松井さんは、日系三世のペルー人、お子さんが2人いるが、来日してしばらくは、言葉が不自由なうえに頼れる人も少なく、冬の寒さもこたえ、そうしたストレスもあったのか、一時はに58kgまで太ってしまった。「食事を半分に減らしたり抜いたりして50kgまで減ったのですが、リバウンドですぐに元に戻ってしまった。それもすぐに、です。」「体調を整える漢方薬を飲み始めると、便秘だけでなく、疲れやすかったのが、1か月とたたないうちに体が動くようになり、ひどい冷え性もいつの間にか治っていました。今では、冬も靴下なしで寝られます。」 体重も少しずつ減り始めた。松井さんは、中国漢方に加えて、食事を変え、運動も取り入れた。運動は毎日、腹筋20回を3セット。苦手な寒い冬の間も散歩を兼ねて薬局に通った。体重は一年で5kg減って52kg。 「まだ、もう少し減らしたい。無理なく続けられるから大丈夫だと思う。何よりリバウンドしないのがうれしいですよね。」

■どんなタイプにもあう漢方茶。三爽茶が注目されています。
 中国やチベットで、消化不良に効き、体を丈夫にすると飲まれる『柳茶』。家畜が食べると、肉の脂肪が落ちるという民間伝承に基づいて科学的検証が行われた。「柳茶に、中性脂肪・コレステロールなどを減少させる効果があるのは、薬理実験でも確認されました。脾(消化吸収機能)の働きを高め、脂肪も減らす柳茶が入った『三爽茶』が、ダイエットのサポートに効果を挙げています。」 ほかに、利尿作用があるスギナや、ストレスを和らげるシベリア人参なども。 「スギナがむくみとなる余計な水分を排出し、ストレスによって暴走する食欲を、シベリア人参が抑えてくれます。」

中医ダイエットを専門家にきくと…

 体重やウエストサイズで「太った」「痩せた」と一喜一憂。女性なら当たり前と思いきや、「それが大きな間違いなのです」と中医学講師の何暁霞さんはいう。「中医学(中国漢方)では、生命活動のもとになる3つの要素、筋肉(気)、脂肪(血)、水分(水)のバランスで、太った、痩せたを判断します。」気が足りないと、食べたものを燃やしてエネルギーにすることができない。血の力が弱ければ、血流が滞り、血中脂肪が増える。水が動かなければ、むくみや水太りになってしまう。つまり、体重より、体調・体質・体脂肪にこそ目を向けるべきだという。

消化吸収力が足りないと痩せない体になってしまう。

 「日本に来て8年になりますが、驚いたのは、日本人女性は〈気虚〉の人がとても多いということです。」気虚とは、気が不足していて、元気がなく疲れやすい体質をいう。「こういう人は、あまり食べていないのに太ると訴えてきます。消化吸収力が弱く食べたものがきちんと吸収できていない、一種の栄養失調ですから。」気虚太りの人には、まず、消化吸収機能を高める漢方を出す。「胃腸を丈夫にしたら太るのでは?と思われがちですが、逆です。消化・吸収の力があれば、食べたものが有用な水分と有用なエネルギーになって、体に余分なものがたまらなくなるので、自然に痩せていくのです。」

 「エネルギーは食物から体内に摂り入れられます。つまり〈脾〉(胃腸)はエネルギーを生む臓器。また水分の代謝にも関係します。でも〈脾〉が弱いと、〈痰湿〉と呼ばれる病理的な水分になって体にたまり、むくみとなり、体を冷やして脂肪をためてしまうのです。」言い方を変えれば、現代の日本女性の多くが、基礎代謝が低く、むくんで体は冷え、脂肪をためこんでしまう体質、ということになる。それが消化器系とそんなに深く関係があったとは!

 「中国には『脾は後天の本』という諺があります。脾は生まれてからの命の基本、という意味です。〈脾〉が元気でないと、気が生まれてきません。気が全身に巡ってないと、五臓六腑の働きもどんどん落ちてきます。」「食事をぬく、減らすのはよくありません。日本料理は、ヘルシーです。ただ、冷たい飲み物は、胃腸の機能を低下させるので控えること。冷たいお茶を飲むと太るという意味の『冷茶生痰』という諺もあるくらいです。」

悪い体質が複合して現れる40代。きちんと体質改善に取り組むべき。

 「日本女性には気虚太りが多いと言いましたが、他にも気が滞る気滞太り、熱や水分が滞る湿熱太りなどがあります。」そして、30歳、40歳にもなれば、その3つがそれぞれに進行して血の巡りを悪化させ、瘀血太りに移行してしまうという。

 「築20年の家ならまだ家自体がきれいですから、さっと掃除するだけでいい。でも、築30年、40年はリフォームが必要。人間も同じ。特に40代からは、腰を据えて体質改善に取り組まなくては。」

 ただし、一口に体質改善といっても、1人1人顔が違うように、気・血・水のバランスも違えば、太り方も違う。「中医学ダイエットの最もいい点はそこなんです。同じものを食べても太る人と太らない人がいるように、その人の体質をきちんと見極めることができる、これは中国漢方ならでは、です。」「だから、リバウンドすることがないのです。もっとうれしいことに、体の機能が高まれば、肌にハリが出て、顔色も一段と明るくなる。驚くほどきれいになる人も多いんです。」

体質はおまかにどのようなタイプがあるのでしょうか?

①エネルギー不足の「気虚」タイプ
 疲れやすく、筋肉不足で代謝が低いので、小食でも太りやすい。水はけも悪く、むくみによる下半身太りに。気虚のまま更年期になると、疲労感が強く出てやる気が出なかったり、ホルモンの乱れでむくみが更にひどくなります。気虚の人は、更年期になると代謝が更に下がるので、食事を減らしても痩せにくい上、体が危機を感じてまた、代謝を下げます。胃腸を丈夫にして、きちんと食べ、代謝をあげることが必要です。

 □おしり、下腹部、太股などが太りやすい。
 □筋肉が弱く、全体的にぶよぶよしている。
 □若いころはやせていた。または下半身だけが太かった。
 □食が細く、胃腸があまり丈夫でない。
 □疲れやすく、いろいろなことが面倒になってきた。
 □舌は大きく、両側にギザギザがあることも。色は赤みがなく薄い。

 食事は、代謝を上げてくれる穀物を、(胃腸が弱く感じる人は)雑炊やお粥でとることをお奨め。雑穀・五穀などを混ぜれば低カロリー。朝食欲がない人は夜を軽く。 しょうがやフェンネルなど消化を助ける食材も有効。 きのこ、豆類も、水分代謝を助けます。

 漢方薬は、気を補う「補中益気湯」、むくみに効く「防己黄ぎ湯」、胃腸を整える「香砂六君子湯」など。

 お茶は、体を温めるほうじ茶や気の働きをよくする棗茶などがお奨め。

②ストレスで食べ過ぎる「気滞」タイプ

 ストレスや精神的不安状態から気が滞ってしまい、体内の栄養をうまく使えないので太りやすい。お腹を中心に全体的に太るタイプです。 気滞の人は、ストレスでつい食べ物に手がでてしまう、好ききらいも激しく、栄養も偏りがちです。ストレスを減らし、食事は気持ちを落ち着かせてとり、暴食を防ぎましょう。

 □体のあちこちが重く、張っている。
 □食べることで気晴らしをすることが多い。
 □同じ食べ物ばかり食べてしまうことがある。
 □おなかにガスがたまりやすい。
 □月経前に胸が張ったり、イライラしやすい。
 □舌にはあまりでないことが多いが、舌の先に赤い点々がでることも。

 食事は、和食を中心に。ゆずやみつば、紫蘇などの香味野菜やスパイシーな料理はリラックス効果あり。特に最初に食べるとよい。酸味のある料理も脳に満足感を与えるので、食べすぎを防ぎます。

 漢方薬は、常に興奮気味で食欲が旺盛な場合は、体の興奮を沈静化する「加味逍遥散」を。うつ傾向で、隠れて食べるようなら、気分の落ち込みや不安を取り除く「逍遥丸」を。

 お茶は、ストレスをコントロールしホルモンバランスを整える刺五加茶(エゾウコギ茶、気を巡らせるハマナス茶などがお奨め。

③血がドロドロで体にも血液にも脂肪が増える「瘀血」タイプ

 血がドロドロになって滞り、老廃物が排泄されにくい体質、冷えもあり、代謝も悪くなるので、脂肪が少しずつたまってくる。太りやすく、元に戻りにくく、全体的に太った固太りになります。 瘀血の傾向が強く出ると、更年期に向かってあっという間に太ってしまう人がいます。また、体脂肪だけでなく、血中にも脂肪がたまると、高血圧や高脂血症などになる危険も増します。瘀血は、年齢的な要因も大きいですが、若いころからの気虚や気滞などをほっておいた結果、瘀血も併せ持つようになります。血をきれいにし、めぐりをよくすることが大切です。

 □全体的に固太りである。
 □見た目より、実は体重がある。
 □お腹が出て、ウエストラインがなくなってきた。
 □血中コレステロール、中性脂肪、内臓脂肪が高めだ。
 □舌は、裏側に紫色の静脈が浮き上がっている。

 食事は、血液をきれいにするために、DHAを含む青魚、ニンニク、ラッキョウ、しょうがなどの匂いのある野菜や、アスパラガス、トマト、パセリなどを取り入れて。

 漢方薬は、血液をサラサラにする「冠元顆粒」、イライラも抑える「血府逐瘀丸」など。 お茶は、血行不良や消化不良、肥満に効くサンザシ茶がお奨め。

④中年体型の原因「腎虚」

 中国医学では、「腎」は水分コントロールのほか、体の老化やホルモンに関係するとされる。若いころ、エネルギー不足の「気虚」のあった人が年齢を重ね、ホルモンバランスの乱れとともに、腎虚体質にうつっていくケースが多い。40代以降の女性は、腎虚が多いです。ホルモンの変調によって、体脂肪も血中脂肪も増えますし、もともと気虚があるから、エネギルー不足で代謝も落ちて、中年体型になりやすい。ホルモンのバランスを整え、気を高めて代謝をあげましょう。

 □生理が乱れてきた。
 □30代後半から少しづつ太りだした。(出産や婦人科のトラブルをきっかけに太りだした)
 □全体的に太っている。
 □トイレが近くなった。
 □白髪が増えてきた。

 腎を高める食べものは、黒いもの、豆類、海の貝類など。六味地黄丸の材料でもある山芋は、気を高める働きがある。

 腎虚の漢方薬として、一般的に処方されるのが、「六味地黄丸」。ホルモンの急激な減少を抑えてバランスを整え、体の衰えをくい止めるとされる。更年期でほてる人は、「こ菊地黄丸」、冷える人は、「牛車腎気丸」なども。 お茶は、更年期ののぼせを鎮める菊花茶、減脂効果のあるとちゅう茶、ホルモンを整える黒豆茶がお奨め。

 お茶は、体を温めるほうじ茶や気の働きをよくする棗茶などがお奨め。