体内トラブルは肌に出る、中国漢方で体質改善

■「クロワッサン」 2006/11/10特大号
 体の中からの素肌ケアの方法として、中国漢方の体質改善方や中国漢方薬が紹介されました。

美肌とは、新鮮な血が全身に行き渡り、活発に働いている状態。

「クロワッサン」 2006/11/10特大号 「中国には、『女子は血を以って本と為す』という諺があります。女性の体は血がもとになっている、という意味です。確かに、生理やお産、母乳などにはすべて血が関わっています。たえず新鮮な血を体中にめぐらせること。それこそが美しい肌の秘訣なのです」と、中医師で中医美容を研究する楊暁波さんがいう。言うまでもなく、血液を作り出す器官は内臓。まず内臓を働かせることが、美肌作りの弟一歩だ、と。

 「中医学でいう『内臓』とは『肝・心・脾・肺・腎』の五臓のこと。これは西洋医学でいうところの心臓や肝臓、肺臓とは必ずしも一致しません」 たとえば、

 「心」は血液をつかさどる器官で、働きが弱くなり気血が不足すると、潤い機能が低下し、肌に艶がなくなる。

 「肺」には血液や水分を全身にめぐらせる働きがある。これが弱まると、皮膚に潤いがなくなり、外へのバリア機能も低下する。

 「肝」は血液の貯蔵庫であり、血流を調節する。肌の弾力を作るエラスチンの生成にも深く関わる。「肝」が弱ると、たるみやシミができやすく、疲れ目、かすみ目にもなりやすい。

 「脾」は肌の弾力やハリに深く関わっている。栄養を皮膚に送る器官なので、働きが低下すると老化がすすむ。

 「腎」はホルモンに関係しており、コラーゲンの生成や肌の代謝に影響を与える。「腎」が弱ると、肌老化がすすみ、シワやシミが増える。

 「内臓どうしが助け合い、影響を与え合っているので、ひとつの内臓の働きが低下すれば、血液生成や循環が悪くなり、その症状は肌に現れます」血液循環をスムーズにし、肌を美しく保つ原動力になるのは「気」「血」「水(津液)」。「気・血・水は、季節やまわりの環境変化などで、不足したり、過剰になったり、たえず変化しています。まさに、肌は内臓を映す鏡であり、変化をキャッチする器官なのです」

たるみ…腎の働きを高めれば、肌はいきいきとします。

 「中医学では老化(たるみ)と一番関係が深い内臓は「腎」。まず腎を丈夫にすることから、たるみの予防を行います」また、胃腸の吸収や代謝の能力が低下すると、栄養がいきわたらず筋肉がおち、肌のハリが失われ、たるみが生じる。「食生活を正しく、生ものや冷たいものを控え、食べすぎに注意して胃腸への負担を軽くする。胃腸を丈夫に働かせることで元気をつけ(益気)、いきいきとした血を全身にめぐらせることがたるみ予防につながるのです」

■たるみに効く漢方薬・食品
 弱った皮膚や粘膜を活性化する「衛益顆粒」や、山芋・キクラゲ・豆類・黒ゴマ・豆腐・くるみなど。

しわ…消化器系の働きを高めれば、肌の潤いが増す。

 「しわは腎がだんだん弱くなり、顔に届くはずの陽気(エネルギー)が減ることで生じます。また消化器系の機能の低下で体内の気・血・水が足りなくなり、肌の潤いが減ることでも起こります」生活習慣の乱れや過労、ストレス、不規則な睡眠でもそれらの機能は低下する。また、紫外線など肌への直接のダメージでも、しわはできやすい。「しわは老化のサイン。避けられない現象ですが遅らせることはできます。まず腎系統を丈夫にして予防し、消化吸収能力を高めて肌に栄養を与えましょう。しわ予防にはストレス解消も効果的です」

■しわに効く漢方薬・食品
 肩こり・貧血・生理不順・冷え性にも効果のある「婦宝当帰膠」や、抗酸化作用にすぐれビタミンE・βカロチンが豊富な「紅沙棘」、コラーゲンの多い鶏手羽先・ふかひれ・なまこ・うなぎ・豚足など。

しみ…気血のめぐりをよくすれば、目立たなくなる。

 中医学では、しみを特徴・自覚症状の違いによっていくつかに分類している。「頬にある褐色のしみで、濃い場合は、気滞血おタイプで、イライラしやすく怒りっぽいのも特徴。気血ねめぐりをよくすることでかなり改善するはず。顔色に艶がなく、めまいがする、腰や膝がだるいという人は、肝腎不足タイプで、肝・腎の働きを高める必要があります。泥色のようなしみは、胃腸の働きが弱り、疲れやすい人に多く見られます。胃腸を丈夫にすればかなり改善されます」しみは気血のめぐりが悪化しても起こることが多い。血のめぐりをよくする漢方薬や顔面マッサージ、ツボ押し、沙棘(サージ)オイルのパックなども効果的だ。

■しみに効く漢方薬・食品
 肩こり・のぼせや血行不良を改善する「血府逐瘀丸」や、気のめぐりを良くし血をふやすことでしみを防ぐ「星火逍遥丸」、グミ科の沙棘のオイルや果汁・レモン・みかん・青梗菜など。

くすみ…気血を養い、血のめぐりをよくすることで改善。

 「中医学では、肌のくすみは腎系統が弱まり、血のめぐりが悪くなったサインだと考えます。まず、気血を養い、血のめぐりをよくする必要があります」また精神が不安定だったり、イライラして怒りっぽかったり、胸や脇が張って苦しいなどの症状を中医学ではまとめて「肝鬱気滞」と呼ぶ。「肝鬱気滞は、ストレスや自律神経失調症からくる不定愁訴に似ていて、肝鬱とくすみは、関連があります」

■くすみに効く漢方薬・食品
 血液の循環が悪くなった瘀血状態を改善する「冠元顆粒」、腎を強くする薬の代表六味地黄丸に枸杞子・菊花を加えた「杞菊地黄丸」、なつめ・黒ゴマ・玉ねぎ・黒豆・生姜・にんにくなど。

乾燥…先天的な乾燥肌も腎の働きを高めることで変わる。

 乾燥肌は肺・脾系統が弱い人、口が渇きやすい人に多い症状。 「生まれつきの体質もありますが、きちんと気血を補い、補腎などを心がけ、養生すれば体質が改善することも多いのです。まずは、よい血をせっせと増やし、全身にめぐらせ、栄養分を肌に充分にいきわたらせることが重要です。また、水(津液)を増やし、肌の水分をいきわたらせましょう」

■乾燥にきく漢方薬・食品
 ビタミンA・E・フラボノイドが豊富で肌に栄養を与える「紅沙棘」、体に元気と潤いを与える「麦味参顆粒」、りんご・バナナ・山芋・ユリ根・ごま・豆腐・納豆など。

敏感肌…炎症を抑えながら根気よく肌のバリア機能を改善。

 「赤ら顔で炎症を起こしやすい敏感肌に共通な特徴として、肌が乾燥しており、表皮のバリア機能が低下していることが挙げられます」血脈をつかさどる心系統、皮膚炎の原因となる肝系統の異常が関係していることが多い。さらに水分不足に加えて、皮膚の脂肪分も少なく皮脂膜がうまくできない場合が多い。「まず炎症を抑えること。症状が落ち着いてきたら、肌のバリア機能を回復させる治療を始めること。時間はかかりますが根気よく続けましょう」

■敏感肌に効く漢方薬・食品
 発疹や炎症の血熱を冷まし健康な肌を取り戻す「涼血清営顆粒」、便秘や吹き出物にもよい「じゅうやく」、緑豆(春雨)、ゴーヤ、白菜、きゅうり、レンコン、豆腐など。

脂っぽい…食生活を改善し、体内にたまった熱を排泄。

 「脂っぽい人は熱過剰タイプで、声が大きく、がっちりした体型の人に多くみられます。もともと体内に熱がこもりやすく便秘気味。肌は皮脂の分泌が多いので、てかりがち。手穴の黒ずみや吹き出物、ニキビに悩まされることもあります」まず、食生活を改善することから。脂っぽいもの、糖分が多いもの、刺激の強い食物は避け、お茶をたくさん飲むことが大切だ。サンザシや五行草、緑茶も有効。

■脂性に効くハーブ・食品
 サンザシや麦芽などが入った「晶三仙」、肌をさっぱりさせるスベリヒユのお茶「五行草茶」、ゴーヤ・きゅうり・菊花・柿・緑茶など。

吹き出物…生理周期に合わせて、体質を調整しよう。

 中医学では、皮膚や毛髪は肺系統に密接に関わりがあると診る。熱や湿気など、外からの刺激を受ければ、肺にも熱がこもりやすくなり、これがニキビやふきでものの原因。「ふきでものの治療はとくに、生理周期に合わせた体質調整が必要。低温期では、水を補いながら熱を取り、高温期では集中的に熱と毒を取り除く周期療法が効果的」

■吹き出物に効く漢方薬・食品
 肺・胃熱・風熱をとる「清上防風湯」、肺熱・風熱をとり風邪にも用いる「涼解楽」、湿と熱をとる「瀉火利湿顆粒」、トマト・大根・セロリ・きゅうり・五行草茶・緑茶など。