婦人病やガン治療の分野で高まる評価中西医結合医療

■「週刊朝日別冊 漢方2005」
 「中医学と西洋医学が連携する中西医結合医療」として、中医学にも造詣が深い西洋医別府正志先生と、婦人病治療に豊富な経験をもつ中医学講師劉伶先生の対談が紹介されました。

 以下は、別府先生と劉先生のコメントです↓

■周期療法は、伝統的な中医学と西洋医学の連携から生まれた治療法、中西医結合医療の誕生や変遷は?

「週刊朝日別冊 漢方2005」 「中国では、清朝末期以降、伝統的な中医学を排斥し、西洋医学を発展させようという動きが活発になりました。しかし1949年に新中国が成立して後、この二つの医学は相反するものでなく、疾病治療という一つの目的のために、互いの優れたところを補い合うべきとする『中西医結合』の運動が始まりました。当時、周恩来首相は、「両足で歩く医療」といいました。片方の足で歩くより歩きやすいし、早く歩けますからね。

 医学界で中医学を学んだ成果として、その一つに「冠心2号方」という漢方処方の開発があります。中国の文化大革命は、あらゆる面で中国が大転換した大事件だったわけですが、人々はたいへんなストレスを強いられ、心臓病や脳梗塞で死亡する人の数が増大しました。当時、毛沢東主席も狭心症と気管支炎を患っていました。そこで、恩首相は、全国の医療機関に心臓病や脳卒中の克服を呼びかけ「冠心2号方」は、これに応えて中西医結合の考えに基づいて開発された漢方処方なのです。この処方は、狭心症や脳梗塞など心脳血管病の薬として評価されました。西洋医学の手法で治癒効果が科学的に立証された中西医結合の初の成果といわれています。」

■中西医結合医療はガン治療の分野でも大きな成果をあげているとか?

 「中西医結合とは中医学と西洋医学のいわば「いいとこどり」です。西洋医学は、機器を活用した診断技術、外科技術がたいへん優れています。それに比べて中医学は、個々の体質に応じた治療や免疫力の向上、未病(半健康状態)分野における治療面で、多様な方法論を持っています。

 現代医学的な治療に中医学的治療を組み合わせると、術後の身体機能の衰えや低下を回復させる、QOLの改善、放射線療法や化学療法などの効果を高めて副作用を軽減する、再発予防などの点でよりよい効果が見られます。こうしたやり方は、中国の病院では幅広く取り入れられており、実績を上げています。」

■不妊に大きな成果をあげている周期療法の中にも、中医学の人間の体がひとつの有機体である、そして疾病は生体内のバランスの乱れという考え方が反映されている?

 「例えば、生理周期を整える方法を考えると、西洋医学の場合、外からホルモン剤を投与するのが一般的です。それに対して中医学は、体が本来持っているホルモンの分泌能力を引き出してあげようというものです。

 つまり、西洋医学の不妊治療は妊娠させる治療であるのに対して、中医学は妊娠しやすい体を作る治療といえます。でも、目的は同じですから、優れた面を補い合って、より高い成果をあげようと考えたのが、中西医結合医療から生まれた周期療法なんです。」

■周期療法とは具体的にどんなもの?

 「西洋医学には、もともと基礎体温表の低温期と高温期から、月経周期や体のリズムをみるという方法があります。中医学では、まず患者の証を診ますが、基礎体温表の2相の型と中医学理論を重ね合わせて対応すれば、女性の不妊症治療にも役立つといことがわかってきました。ここから中西医結合医療の治療方法が生まれました。当初は、「周期調節法」と呼ばれ、さらに研究が重ねられたのちに「周期療法」として確立しました。

 女性の月経周期は、月経期、卵胞期、排卵期、黄体期という4つの役割をもって構成されています。毎月繰り返される月経は、すべて妊娠を準備するためのプロセスといえますから、月経がきちんととのえば、当然妊娠の可能性は高まります。そこで、それぞれの期に合わせて、婦人病に常用される各種の漢方薬をのみ分けます。」

■乱れている月経が順調になるとどのくらいで妊娠できるでしょうか?

 「一般的には、平均6-8ヶ月で妊娠することが多いですね。中には、1か月もしないうちに妊娠したり、2年くらいかけてようやく妊娠というケースもあります。2年という長期にわたりますと、精神的にもつらいだろうと思いがちです。ところが、体全体の機能や自覚症状、例えば生理不順、冷え性、貧血、胃弱、肩こりや腰痛などが改善されるため、ほとんどの方が満足されます。表情がだんだんよくなってきて肌もきれいになってきますね。」

■検査で問題がない場合でも、病院では「不妊」ということで治療に入っていきますが、周期療法はどのタイミングで考えたらよいのでしょう?

 「まず西洋医学的な不妊検査はしたほうがよいと思います。原因が、染色体の異常とか、卵管のつまりや癒着など器質的な問題の場合、漢方では限界があるからです。患者さんが若くて時間に余裕がある場合は、病院でも基礎体温を見ながらタイミング法の指導からスタートするでしょう。できれば、この時点で漢方をはじめるのが理想的です。ここで体調を整えることにより、自然妊娠する確率が非常に高くなります。また、高度治療に入った場合でも、周期療法を併用することで体全体の調子を整えて、卵子を育てたり、いい子宮内膜を作って着床しやすい体質に改善します。

 例えば、西洋医学の治療で、排卵障害がある場合、クロミッドという排卵誘発剤をよく使います。しかし、クロミッドの単独使用だと排卵はしても妊娠率はむしろ下がることが知られています。こんなときに、漢方薬と併用すると、妊娠率が高まり、プラスに働く場合が多々あります。」